【ニュースを斬る!】ちょっと煽りすぎじゃない?週刊現代の「都心でマンション「大暴落」売れ残り続出」を斬る!

「週刊現代」という週刊誌で「都心でマンション「大暴落」、売れ残り続出…要注意エリアはここだ!」(リンク先)という記事が話題に上がりました。

もしかしたら、当サイトをご覧の読者の方も見た事があるかもしれません。記事としては正しい点もあるのですが、危機感を煽りすぎているだけの点もあるので、「マンション探偵」としての視点この記事解説しましょう。

価格が暴落しているように加工したグラフ

まずは、「週刊現代」の記事よりマンションの暴落が始まった根拠とされるグラフを見てください。

暴落が始まったと煽るグラフ(週刊現代より引用)

暴落が始まったと煽るグラフ(週刊現代より引用)

このグラフに専門家が「バブル崩壊」と解説されると不安に感じるのも無理はありません。

ですが、以下のグラフも見てください。週刊現代と同じ不動産経済研究所のデータを元にマンション探偵が作成したグラフです。

新築マンションの価格の推移(データ元:不動産経済研究所)

新築マンションの価格の推移(データ元:不動産経済研究所)

いかがでしょうか?

このマンション探偵のグラフを見て「マンション市況の崩壊が始まった」とは言えないでしょう。

なぜ、同じデータを使っているのにこんなにもグラフが変わるのか?

それはグラフの作り方が異なる為ですが、マンション探偵では月々の新築マンションの平均価格の推移で作成しているのに対し、

週刊現代のグラフは「平均価格の前年同月比増減率」というデータでグラフを作っているのです。

ちなみに、このデータ元の「不動産経済研究所」ではマンション探偵と同じ月々の新築マンションの平均価格の推移をグラフにして開示しています。

リンク先:「不動産経済研究所」首都圏の建売住宅市場動向 (PDF)

もちろん、どちらのグラフの方が役に経つかは人それぞれの考え方もあるでしょう。ですが、マンション探偵が作成した毎月の平均価格の推移のグラフのデータを加工して「マンション市況の崩壊が始まった」と危機感を煽りすぎてはいないでしょうか?

PDFにはなりますが、このグラフ元の資料をぜひ一読していただきたい。

 

そもそも、大手ディベロッパーは完売させるつもりがない

また、週刊現代の記事では「売れ残りマンションには、三菱地所、三井不動産、住友不動産、野村不動産などの大手デベロッパーが手掛けた人気ブランドマンションが多く含まれています」(引用:週刊現代)と記載されていますが、大手ディベロッパーはそもそも完売させたいと考えていないディベロッパーもあるのです。

その最たる会社は「住友不動産」でしょう。例えば、住友不動産が開発した大阪八尾の「メガシティタワーズ」は完成後、数年かけて販売しており、ようやく完売したマンションです。

これは、「メガシティタワーズ」が売れなかった売れ残りのマンションという訳ではなく、逆に「住友不動産」や「メガシティタワーズ」のブランド力を維持するために敢えて安売りをせずに実物を見てもらいながら販売するスタンスを住友不動産が貫いたからです。

その結果、住友不動産の利益率も非常に高くなっているのです。

<参考:代表的なディベロッパーの営業利益率>

住友不動産(H28.3月) 20.3%
野村不動産HD(2016年3月期) 14.2%
三井不動産*(2015年 3月期) 8.9%
三菱地所レジデンス(2016年3月期) 7.7%
大和ハウス工業(2016年3月期) 7.6%

*三井不動産:分譲セグメントの「住宅分譲(個人顧客向け)」から営業利益率を算出

あえて安売りをせず、時間をかけて売っていくスタンスの会社の利益率が高いということは、「完売をさせるつもりがない」戦略が正しいと言えるのではないでしょうか。

在庫数は確かに増えているが…

週刊現代の記事では「首都圏マンションは7月の販売在庫数も6498戸に増えていて、「これは不動産ミニバブルが崩壊した’09年頃に近づく水準です。マンションバブルの崩壊を予兆するデータが出揃ってきたと言えます」(引用:週刊現代)と記載されています。

これに関しては実際にデータで見ても在庫数は増えていることがわかります。

完成済みマンション在庫数推移(データ元:不動産経済研究所)

完成済みマンション在庫数推移(データ元:不動産経済研究所)

但し、当サイトの調査の結果、2009年上半期の完成在庫は5,125戸*となっています。

ですので、現在の完成済みマンションの在庫がおよそ3000戸であるため「これは不動産ミニバブルが崩壊した’09年頃に近づく水準」(引用:週刊現代)と言い切ってしまうのは、少々無理があるようにも思います。

*データ元:長谷工総合研究所「2009年上半期 マンション市場の総括」より(リンク先:PDF)

最後に

今回の記事では、週刊現代の記事にあるグラフなどが恣意的なものについて言及をしました。

明らかに危機感を煽るためのグラフなどは論外ですが、実際に現在のマンションの市場においては非常に判断の難しい時期と言えると考えます。

例えば、契約率は6割〜7割程度に推移しており低めの水準となっています。

ですが、価格が暴落しているわけではなく、むしろ東日本大震災・東京オリンピックによる一時的な需要の増加に伴う人件費の増大や円安による部材高(現在は円高ですが…)によって価格は高止まり。

さらに、新規発売マンションの戸数も減少していることから、他のマンションとの価格比較も起こりにくく、マンションを購入する上では非常に難しい時期なのです。

ですが、当たり前ですがマンションは一品物ですので、時間が経てば同じ立地に別のマンションができるというものではありません。

「マンションバブルの崩壊だぁ」というような煽る記事に流されるではなく、心配するのでもなく、しっかりとそれぞれのマンションを比較・検討した上で購入するか否かを判断してください。