【ニュース分析】「2015年の新築マンション平均価格は過去最高」は数字のマジック!

【ニュース分析】「2015年の新築マンション平均価格は過去最高」は数字のマジック!

ニュースなどで「去年(2015年)の新築マンション平均価格は過去最高」という記事をご覧になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

平均価格が上がっているって大丈夫?と思われた方もいらっしゃると思いますので、ここではこのニュースを分析してみます。

それでは、まずはニュースの原文を見てみましょう。

ニュースサイトの場合は元の記事がすぐに消えてしまいますので、ここでは日経新聞から以下に引用いたします。

 不動産経済研究所(東京・新宿)が22日発表した全国マンション市場動向調査によると、2015年の発売戸数は14年比6.1%減の7万8089戸だった。前年割れは2年連続。平均価格は4618万円で14年比7.2%上昇し、調査を始めた1973年以降で最も高かった。

最大市場の首都圏では14年比9.9%減の4万449戸だった。このほか、中国地方が15.0%減、九州地方が16.6%減と減少幅が大きかった。東海地方は14.6%増だったが、名古屋圏以外の地方都市での発売が堅調だった。

全国のマンションの平均価格はこれまで1991年の4488万円が最高だった。建築作業員の人件費高騰で販売価格が上昇し、消費者の購入意欲を鈍らせたようだ。昨秋に発覚した横浜市のマンション傾斜問題が販売現場に与えた影響は「一時的だ」(松田忠司主任研究員)とみている。

16年の全国の発売戸数は15年比7.6%増の8万4千戸を見込む。17年4月に予定される消費増税に伴う駆け込み需要に加え「昨年から販売を先送りにしてきた物件が今年に入ってから売り出されるため」(同)と説明している。

日本経済新聞 2016/2/22より引用

このニュースだけ見るとマンションの建築費が過去最高に高騰しているように感じます。

ましてや、日経新聞に記載している内容なので、一体何が数字のマジックというのでしょうか。

まずは、以下の表をご覧ください。(クリックで別リンクで拡大します)

マンション価格推移(引用:不動産経済研究所)

マンション価格推移(引用:不動産経済研究所

これは首都圏マンションの価格推移を2009年〜2015年までをまとめたものです。

難しく考える必要はなく、シンプルに「東京都区部(6,732万円)が他の地域(神奈川県:4,953万、埼玉県4,146万、千葉県3,910万)よりも高い」(ともに2015年)と理解ください。

千葉県にいたっては東京都区部と比べて3,000万近くも差が開いていることがわかります。

次に確認をすべきなのはマンション発売戸数を見てみて価格が高い東京都区部比率を計算してみましょう。

マンション発売戸数推移(引用:不動産経済研究所)

マンション発売戸数推移(引用:不動産経済研究所

 ここでの2015年の東京都区部比率は「東京都区部(18,472戸)÷首都圏計(40,449戸)=45.66%」と計算できます。

この数字は首都圏のすべてのマンションのうち45.66%が東京都区部のマンションであるということが言えます。

では、ニュースの記事にある今まで高かった1991年の発売戸数の比率を見てみましょう。

マンション発売戸数推移(引用:土地総合研究所)

マンション発売戸数推移(引用:土地総合研究所

1991年のデータが見つかりませんでしたので、土地総合研究所のホームページより引用しました。

ここでも同じように比率を計算してみましょう。

「東京都区部(4,748戸)÷首都圏計(25,910戸)=18.32%」と計算できます。

 

改めて、2015年の東京都区部の比率と比べてみましょう。

2015年の東京都区部の比率:45.66%

1991年の東京都区部の比率:18.32%

 

つまり、全体の平均値では確かに過去最高になったかもしれませんが、このように計算をしてみると価格のかなり高い東京都区部の比率が1991年よりも倍以上に伸びていることがわかります。

高い地域のマンションの比率が増えているのですから当然、全体の平均値は高くなったことは自然なことであると言えるでしょう。

 

 

近畿圏はバブルの価格に遠く及ばない状況

ここまででこのニュースの中身は首都圏などマンションの価格の高い場所に集中したために起きたことということがわかります。

ここにさらに、興味深いデータがあります。以下をご覧ください。

新築マンション平均価格の年次別推移表(引用:不動産経済研究所)

新築マンション平均価格の年次別推移表(引用:不動産経済研究所

このグラフは首都圏・近畿圏・全国平均の3つの要素の新築マンション平均価格となっています。

少し古いデータなので、上記の表と合わせながら、確認すると良いですが、ここで、注目をしたいのが今回、過去最高を記録したのは全国平均だけであり、首都圏平均(5,518万/2015年)・近畿圏平均(3,788万/2015年)は過去最高の数値よりは全然差がついています。

特に近畿圏の乖離は極めて大きなものであることがわかります。

バブル期の過去最高値は5,552万円に対して2015年が3,788万と全く上がっていないことがわかります。

このことからも、近畿圏でのマンションの購入においてはバブル期を超えている訳ではないので、焦らずにじっくりとマンションの購入検討をすると良いでしょう。