【ニュースを斬る!】「マンション販売、1992年以来の低水準 首都圏で不振」って関西ではどうなの?

先日、ヤフーのトップのニュースに「マンション販売、1992年以来の低水準 首都圏で不振」(朝日新聞)という記事が掲載されていたのを、ご覧になられた方もいるのではないでしょうか。

印象的なニュースタイトルだったこともあって、結構見ている人も多いようです。

ただ、あまりこのニュース記事では関西のことはそこまで触れられていなかったこともあるので、マンション探偵では関西のマンションを主軸に取り上げていますので、関西のマンション販売の状況について、フォーカスを当ててこのニュースを解説していきます。

近畿圏は▲1.3%減

「マンション販売、1992年以来の低水準 首都圏で不振」というニュースですが、そもそも、元の情報は当サイト「マンション探偵」でも何度も取り上げている「不動産経済研究所」の発表データがニュースの元になっています。

(以下、データ引用「不動産経済研究所」より)

その「不動産経済研究所」によると首都圏は対前年比で11.6%も減少していると発表になっています。

首都圏の新築マンションの発売戸数は、2015年が40,449戸に対して2016年が35772戸、戸数にして4677戸も減少しているようです。

一方で近畿圏を見てみると1.3%の減少に留まっています。

戸数では、2015年が18930戸に対して2016年が18676戸、戸数にすると254戸の減少に留まっています。

グラフで見てみると以下のようになります。

首都圏と近畿圏の2015年、2016年のマンション発売戸数の比較

このグラフを見て「関西は首都圏と比べて、そこまで下がっていないんだな」と安心してはいけません。

むしろ、関西は首都圏よりも早く下がっていたというのが、正しい分析結果と言えるでしょう。

ということで、直近10年間で最も厳しい時期であったリーマンショックの時の2009年のマンション発売数と2016年を比較して見ましょう。

2009年と2016年のマンション発売戸数の比較(首都圏・近畿)

このグラフの緑色の方が2016年を表しています。

首都圏・近畿圏共に若干、リーマンショックの時よりも悪くなっていることがわかります。

首都圏は2016年に大きく減少したので、リーマンショックを下回ったというのが今回のニュースでした。

一方で、関西は今年は微減に留まっていますが、元々首都圏よりも先に下がっていたので、今回は下がりようがなかったとも言えるのです。

2013年〜2016年のマンション発売戸数(近畿のみ)

2014年にリーマンショックの年の水準に下がってからは、ここ3年間ほとんど同じ水準になっています。

ということで、「2016年の前年比較が近畿圏は1.3%の減少に留まり、首都圏よりも健闘している」という訳ではないので、留意しましょう。

そもそも”売れてない”じゃなくて”売るマンションがない”?

ここまで読まれた読者の中にはこんなことを感じる人も多いのではないでしょうか?

「もしかして、リーマンショックの時よりも発売戸数が少ないってことは、バブル崩壊ってことなんじゃ?」「やっぱり東京オリンピックの前にバブルは崩壊すると思っていたよ」

確かに冒頭の朝日新聞のニュースの書き方も「マンション販売、1992年以来の低水準 首都圏で不振」と題しており、バブル崩壊を読者に連想させるような構成になっていますので、無理はありません。

しかし、マンション探偵の見解ではバブルが崩壊したのではなく、「そもそも”売れてない”じゃなくて”売るマンションがない”」状態が今だと考えています。

その根拠が以下のグラフになります。

このグラフはマンション価格の2009年(リーマンショックの年)と2013年〜2016年までのグラフです。

マンション価格の推移(首都圏・近畿)

どちらもリーマンショックの年と比べると上がっていることがわかります。

首都圏が約21%、近畿圏が14%価格が上がっています。

一概には言えませんが、もし、今の状態が本当にバブル崩壊であれば、少なくとも価格が下がっている傾向が表れてくるはずです。

「価格は上がっているのに、売れている数が少ない」状態。

これは、マンションを購入したいニーズは一定数あるものの、どんなマンションでも売れるわけではない。

立地面やプラン、設備などが良いマンションしか売れないので、条件に見合う、ニーズがしっかりとあるマンションにあった土地がそこまでないため、マンションの供給戸数が下がっていると想定しています。

もちろん、価格が上がっている要因には、建築費や人件費の上昇もあり、採算の取れる立地、取れない立地などの問題もあるとは思いますが、少なくとも価格が下がっていない以上、バブルの崩壊ではないとは言えるでしょう。

最後に

ということで、この記事では「マンション販売、1992年以来の低水準 首都圏で不振」というニュースをマンション探偵流で分析・解説しました。

この記事で最も言いたかったのは「最近、雑誌や新聞などでマンションのバブル崩壊を煽るような記事が増えている気がしますが、そういった記事に踊らされずに、しっかりと自分にとって価値のあるマンションかどうかを判断、検討をしてほしい」

これが一番言いたかったのです。

よく「マンションはいつ買えばいいのか?」とマンション探偵に相談される方がいますが、結局のところ全員に共通する買い時はありません。

だからこそ、こういったニュースに左右されるのではなく、今の自分の希望や将来の理想に近いマンションであるのか。という観点でマンションを選んでいくようにしましょう。