横浜傾斜マンション”全棟建て替え決定”から考える理想のマンションの住み方

三井不動産レジデンシャルが販売した「パークシティLaLa横浜」の建物の傾き・杭打ちデータの流用問題が騒がれていましたが、ようやく、マンション管理組合として、全4棟の建て替えを正式に決定したとのニュースがありました。

建て替えに関しての是非などは他のサイトに任せるとして、このマンション探偵では実際に住んでからどういう点に注意して住んでいけばいいのかを考えていきます。

それではまず最初に「パークシティLaLa横浜」において問題発覚から補償に至るまでの経緯を簡単に見ていきましょう。

〜問題発覚まで

当初、マンションの傾きに違和感を感じていたのは、一部の住民の方だったようです。

その住民の方が「三井不動産レジデンシャル」へ連絡をして、担当者が現地に行き確認したところ「東日本段震災の影響である」と言われています。

しかし、その回答で納得ができなかった住民が横浜市に訴えたことによって、三井不動産レジデンシャル側が本腰で調査チームを結成して、調査した結果、杭打ちデータの流用が発覚して大きな問題になったという流れになっています。

もし、杭打ちデータの流用がなかったら?

今回の「パークシティLaLa横浜」については、杭打ちデータの流用が起きておりここまでの大きな問題になったと言えるでしょう。

ですが、当時の状況を冷静に振り返ってみると、東日本大震災の影響によって東京の新木場や千葉などでは液状化の被害が実際に出ていたのです。

ということは、この「パークシティLaLa横浜」とは全く別の話ですが、もし杭打ちデータの流用が一切ないマンションで傾きがあったら、どんな事になっていたのか?

そうなったら、どうしたらいいのか?を考えてみよう。

違和感があるまでは普通に暮らしていてもOKだが…

まず、今回の「パークシティLaLa横浜」と同じく、違和感を感じるまでは、普通に暮らしていても全く問題ないでしょう。

住民の立場としては、何か具体的な違和感が発生してからの初動が大事です。

ですが、一つポイントがあるとすると「大震災」や「大水害」などが周辺で発生した場合には、少し気にした方がいいかもしれません。

「大震災」はもちろん傾きなどが発生する可能性があります。基本的に構造計算を行っていますが、その耐力は箇所によってマチマチです。通常、開口部を設けた場所の近くは補強筋を入れていますが、地震の揺れ方などによって一部に曲がりや傾きが生じる可能性もゼロではありません。

さらに「大水害」についても留意が必要です。

例えば池沼を埋め立てたところは軟弱地盤になりやすく、液状化の発生リスクも高いですし、比較的安定している台地でも縁辺部などは豪雨によって地盤が緩くなることもありえます。

違和感があれば専門家の調査をしたい。

次に違和感があった場合はできれば、専門家に調査を依頼したい。

これは、施工上に大きな失敗やデータの改ざんを証明するためと言うよりは、構造的に主要な部分であったり雨水の浸入を防止する部分に関して、どのくらい影響があるのかを調査・証明するためという目的のためです。

実際にこれで、その違和感を証明できれば実は今の新築マンションであれば「住宅瑕疵担保履行法」という法律で守られているのです。

この法律は住宅における主要な部分の瑕疵を10年間保証するというもので、保険の場合だと業者側が代金を支払って加入をしないといけないことになっています。

そして、この保険は業者が倒産等で住宅事業者が直せない場合には、消費者が直接保険金を受け取れるだけでなく、トラブルになりそうな場合には、紛争処理制度があり、費用はたった1万円だけで弁護士会の中に設置された住宅紛争審査会が斡旋してくれるのです。

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住宅瑕疵担保履行法(引用:国土交通省

専門家の調査に依頼するだけでもハードルが…

とは言っても、その専門家に依頼するだけでも、ハードルは高い。

管理組合がお金を出すとすれば、想定外の費用ですので、議決を取らなければなりません。

その場合にも、区分所有者・議決権の過半数をそれぞれ取らないといけませんが、余分な費用がかかってしまうかもしれないものですので、これを通すのがまた難しい。

さらに、違和感を感じた入居者個人がお金を出すとしても、専門家が共用部分の中に入って色々な検査を勝手にはできません。

これも管理組合の許可が必要になりますし、万が一共用部分だけではわからない場合には専用部分を保有する区分所有者に許可を得て中に入るなども必要になるかもしれません。

専門家の意見を得ていればスムーズに進む

こうして大変な思いをして得た専門家からの意見はその後の処理をスムーズにしてくれるのです。

それこそ、売主には瑕疵担保責任がありますので、それを立証という意味でもスムーズですし、上記の住宅紛争審査会における問題解決も専門家からの意見があればスムーズに進んでいきますので、当サイトとしてはオススメの住民による初動と考えます。

いきなり事を荒立てるのはリスク有り

実際に「パークシティLaLa横浜」の場合、専門家の調査を得た上で住民が横浜市に訴えたのかはわかりませんでした。

ですが、もし、専門家の調査を経ずにいきなり住民が市などへ訴えるとなるとリスクが高いと言えるでしょう。

これは訴訟に負けるとかのリスクではなく、風評被害などによって、そのマンションの資産価値が落ちてしまうということです。

このようなマンションに関する裁判などはマスコミ的にも視聴者の注目を得やすいため、取り上げやすいと言えるでしょう。

ただ、その訴訟で勝てずにマスコミに取り上げられ、マイナスの風評被害だけで終わってしまうとそれこそ、目も当てられない状況になります。

管理組合で予めマンションのチェック体制を決めておきたい

結局のところは何か問題や違和感があった時にスムーズに次のアクションに移れるのかどうか。これが重要といえるでしょう。

そういった意味では、平時の時点でマンションのチェック体制を管理組合で予め決めておけるのが理想です。

実際にマンションのチェックをするのは簡単ではありません。

例えば、コンクリートの強度を測ることでも、実物のマンションのコンクリートを剥がすわけにはいかないですから、同じコンクリートで作ったサンプル品(スランプ試験)の強度を測っているのです。

そういう意味では出来上がってしまっているマンションの調査となると、簡単にはいきません。

だからこそ、平時の時点でしっかりと対策を決めていくということが安心してマンションライフを送る基本といえるでしょう。