先日、当サイトで公開した記事「【ニュースを斬る!】ちょっと煽りすぎじゃない?週刊現代の「都心でマンション「大暴落」売れ残り続出」を斬る!」が好評でしたので、その第二弾!ということで「マンションに関係しそうな統計情報2016年度版」を公開します。
この記事は、不動産やマンション関連の統計情報など根拠のある2016年度の数値をいくつかピックアップして解説していきます。
週刊誌に「バブルが崩壊する!」というような文言に惑わされずに、統計情報をしっかりと確認する癖を持っておきたいところです。
ちなみに、この記事で特集している統計情報は今年の「宅地建物取引士(通称:宅建士)」試験でも出題されるような内容となっていますので、試験対策にもなる内容に仕上がっています。
もちろん、このサイトの読者の方で宅建士の試験を受けられる人は多くはないでしょうが、マンションを購入する際の営業マンが「宅建士」である場合が多いので、「宅建士ってどんな資格なのかなぁ」となんとなく疑問に思っていた人に少しでも参考になると嬉しく思います。
注釈:宅建士は昨年度より名称が変わっており、以前は「宅地建物取引主任者」となっていましたが、この両者は同じ試験です。
土地白書(平成28年度版・国土交通省 リンク)
「平成27年度土地に関する動向」では、地価が上昇基調で推移していることや、住宅・オフィス市場が堅調であること等について報告されています。
全国の土地取引件数(売買による土地の所有権の移転)は128.7万件(前年比2.4%増)となり、2年ぶりの増加となっています。
<マンション探偵解説>
土地白書は国土交通省が毎年発表している地価や土地取引に関する公的な資料となります。
今回、ここで注目の指標として挙げている数値は、売買による所有権の移転登記の件数を挙げています。
単純な話で売買による所有権の移転の件数が増えていけば土地の取引が頻繁に行われていることの証になりますので、バブルの先行指標(景気の動向を計る際に実体よりも先行して先に動く指標)とも言えるのです。
平成27年度の数値としては、前年比2.4%増ということで、2年ぶりの増加となっていますが、増加幅から見てもバブルと言うにはまだまだ物足りない取引件数と言えるでしょうね。
やっぱり、雑誌などの記事は事実を一部だけ切り抜き煽る記事が多いので、このような公的な資料を参考にして欲しいですね。
ちなみに、土地白書から引用した以下の表もみてください。。これは直近の地価の変動率を表したものです。
■全国の地価の変動率
「住宅地」:-0.2%(8年連続の下落だが、一方で直近6年は下落幅は縮小している)
「商業地」:+0.9%(8年ぶりの上昇)
直近3年分の変動率の数値もあげていますが、全体的に価格は上昇傾向にはあるもののこの数値ではバブルとは言えない数値ではないでしょうか。
地価公示(平成28年度版 国土交通省)
続いて本サイトでもよく取り上げている地価公示を見てみましょう。
2016年のトレンドをまとめると、こんな感じです。
■全国平均:「全用途平均」で8年ぶりの上昇。用途別では「住宅地」ではわずかな下落だが下落幅の縮小。「商業地」では8年ぶりに上昇に移行。
■三大都市圏:「住宅地」「商業地」ともに上昇基調が続く。(3年連続)
■地方圏;地方の中でも中核市では三大都市圏を上回る上昇(「住宅地」「商業地」ともに)その他の地域では下落幅が縮小(6年連続)
<マンション探偵解説>
地価公示価格は標準的な土地について正常な価格を複数の計算方法から算出した価格となります。
と言われても、分かりづらいので簡単に言えば「土地に乗っている建物などは一切考慮せず、更地の状態で通常算出される土地の価格」と考えればよいでしょう。
この地価公示でも全体的に下落幅が縮小したり、8年ぶりの上昇など土地価格の改善傾向が見えます。
ただ、全国平均で言えば「住宅地」はまだ8年連続で地価が下落が続いているのですから、そもそも土地に関してはまだバブルの段階ですらないと言えるのではないでしょうか。
住宅着工統計(平成28年度版 国土交通省)
次は経済のニュースなどでよく取り上げられる機会も多い「住宅着工統計」を見てみましょう。
この指標は不動産だけでなく、個人消費の動向などが計れるため経済全体の動向を見るときにも重要といわれている指標です。
では、住宅着工統計のトレンドを見てみましょう。
■全体的には持ち家の新設は減少しましたが、貸家や分譲住宅が増加しており全体的に増加しています。(新築マンションは「分譲住宅」の中に含まれます)
■新設住宅着工戸数
平成27年:909,299戸(前年比:1.9%増)*2年ぶりの増加
平成26年:892,261戸(前年比:9.0%減)
平成25年:980,025戸(前年比:11.0%増)
平成24年:882,794戸(前年比:5.8%増)
■内訳
持家:283,366戸(前年比0.7%減)
貸家:378,718戸(前年比4.6%増)
分譲住宅:231,201戸(前年比1.6%増)
分譲住宅の内:マンションが115,652戸で前年比4,7%増と全体を押し上げています。
<マンション探偵解説>
住宅着工統計は経済ニュースなどに強い人にはお馴染みの指標と言えるでしょう。
日本だけでなく、アメリカなどの主要国の経済指標としても注目されています。
全体では平成26年に一度下がってしまいましたが、平成27年には再度増加に転じています。そして、マンションの販売戸数の増加が全体の増加を牽引していると言えます。
不動産価格指数(マンション指数・国土交通省)
不動産価格指標とは、住宅・マンションの価格を買い主に対してアンケート調査を行い、月ごとの不動産市場の動向を指標としています。
全国のマンション指標については2013年3月〜2016年5月まで39か月の連続プラスとなっています。
<マンション探偵解説>
この指標は不動産価格の推移を指標としたものです。
今まで見てきた土地の指標については、多少の改善傾向でしたが、マンション指数については、39ヶ月も連続でプラスとなっています。
この要因としては、東日本大震災からの復旧に伴う職人の人件費高騰や円安による高騰などが挙げられます。
不動産業界の業績について
不動産業界の業績についても、ここで簡単に見ておきましょう。
(1)売上高
36兆9,812億円(2年ぶりの減収)
(2)経常利益
4兆6,383億円(2年連続の増益)
(3)売上高営業利益率:12.6%
前年よりも上昇しており、全産業の平均よりも高い。
(4)売上高経常利益率:12.6%
前年よりも上昇しており、全産業の平均よりも高い。
<マンション探偵解説>
ここでは、マンションを含む不動産業界の業績について挙げています。
直近の売り上げとしては、若干の減収となっていますが、利益としては増加傾向にあります。
宅地建物取引業者に関する統計
最後に宅建業者に関するデータを掲載します。
■宅地建物取引業者数(平成26年度末):122,685業者(9年ぶりの増加)
■宅建業者に対する監督処分件数(平成26年度):249件(監督処分件数は昨年と比較して減少)
指示処分:34件
業務停止処分:74件
免許取消処分:141件
最後に
今回の記事では宅建士試験にも役立つような構成で、統計情報について解説をしてきました。
直接、マンションを購入する人にとっては関係ない情報も含まれている点もありますが、統計情報の全体的なイメージを掴むにはちょうど良いのではないでしょうか。
そして、宅建士の試験がどんなものなのかも少しイメージできると、マンションの営業マンがどんな知識を持っているのかも少しイメージできるかもしれません。
ちなみに余談ですが、宅建士の試験は全部で50問出題されますが、この記事で解説した項目はたった1問しか出題されませんが…