もう他人事じゃない?マンション住民のAirbnb(民泊問題)を知ろう【2016年5月時点】
最近、街を歩けば、中国などのアジア系の観光客が増えたように思いませんか?
それもそのはずで、外国人観光客は爆発的に伸びており2012年に835万人だった外国人観光客は2014年には1341万人とこの2年で爆発的な伸びとなっていることがわかります。

日本に訪れる外国人観光客の推移(引用:日本政府観光局)
そして、今後は東京オリンピックも2020年に開催されることから、日本政府として今後は外国人観光客を2020年までに4000万人にまで増やそうという大きな目標が打ち出されています。
日本を訪れる外国人観光客が増えることは日本として考えると良いことではあるのですが、マンションの住民や購入検討者には外国人観光客が増えることによってある問題が浮上してきています。
それが、マンションの所有者と旅行客をつなぐ、「Airbnb(エアー・ビー・アンドビー)」(いわゆる民泊)です。
この記事では、そんなAirbnb・民泊の問題点やマンションの住民に与える影響を考えてみます。
編集部注:Airbnb・民泊の問題は近年表面化しつつある問題であり、まだ判例や政府としての方針も流動的な状況となっております。
そのため、この記事の執筆段階(2016年5月)時点での情報であるため、留意してください。
そもそも、Airbnb(民泊)ってなんなの?
それでは、早速、Airbnb(民泊問題)の対策を解説する前に、そもそもAirbnb(民泊)ってどんな物なのか確認していきましょう。
Airbnb(エアービーアンドビー)とは個人が自分の家などを貸し出しできたり、登録されている宿泊施設に泊まることができるサービスのことです。
世界的にはAirbnbが最も大きなサービスですが、中国人にはAirbnbではなく「途家网 tujia.com」などの方が利用されています。
そのため、Airbnbのようなサイトを総称して「民泊」と呼ぶようになっています。
利用方法はとても簡単です。
ここではAirbnbを例に見ていきましょう。
まず、Airbnbのサイト(https://www.airbnb.jp)に行き、宿泊したい場所と日付・そして人数を入力します。

宿泊したい場所と日付・人数を選ぶだけ(引用:airbnb)
幾つか該当する部屋が出てきますので、価格や場所・レビューなどをチェックすることができます。
あとは、気に入った部屋を選択すると予約できます。
以下では大阪で7泊した場合にレビューで評価の高い部屋を選択した結果です。
7泊でも34,713円と非常に安価なのがAirbnbの人気の理由です。
しかも、それだけではありません。
Airbnbでは、泊まる人(ゲスト)の人数が増えても、費用が変わらない部屋も多くあるのです。
ホテルだと同じ部屋でも、人数が増えるとその分価格も高くなってしまいますので、こう言った点も人気の秘密と言えるでしょう。
部屋を貸し出す側はどうなっているの?
部屋を借りることが簡単にできるAirbnbですから、貸し出す側もとても簡単にできるのです。
- 部屋の写真を撮って
- 説明文を書いて
- 料金を決めるだけ。
たったこれだけで、Airbnbに登録することができるのです。
もちろん、実際に宿泊の予約が入れば、ゲストとの連絡や案内、清掃やシーツ・タオルの準備・消耗品の用意などを行いますが、登録する点は最低で上の3点さえできていれば登録はできるのです。
貸し出す側はどれだけの収入になるの?
気になる貸し出す側がどのくらいの収入になるのか?これもAirbnbでは開示していますので、収入もチェックしてみましょう。
このページ「https://www.airbnb.jp/host」からそれぞれの場所ごとの収入の相場がわかりますので、詳しく知りたい人はこのページからチェックしてみましょう。
以下が大阪市の収入の相場となっています。貸し出す部屋のタイプや人数などによっても、若干異なるようです。

大阪市内のAirbnbの収入想定(1週間)(引用:公式HP)
大阪市内であれば1週間で42,536円と想定されています。
次に神戸市を見てみましょう。
神戸市の場合、大阪と比べて観光ニーズがそこまで高くはないこともあり、少し安い1週間で29,895円となっています。
一方で京都市は観光のニーズが非常に高いことから、大阪よりも顕著な価格がついていますね。
価格が高い場所は将来、部屋の供給数が増える可能性がありますので、普通のマンション住民から見れば京都や大阪は注意が必要と言えるでしょう。
注:上記の計算はAirbnbによるものであり、また2016年5月時点のものです。そのため、将来価格が変更する可能性があります。
Airbnb(民泊)の問題点とは?
ここまで、Airbnb(民泊)の説明をしてきましたが、Airbnb(民泊)の便利さや気軽さはイメージできたのではないでしょうか?
そして、ここに来て東京オリンピックに向けた外国人観光客の誘致を積極的に行っていこうとしているわけですから、今後もAirbnb(民泊)は増えて行く傾向にあると言えるでしょう。
さて、ここからが本題です。
Airbnb(民泊)が増えることによってマンションの普通の住民にどのような問題点が発生するのでしょうか?
その問題点を一言で言えば「マンションのセキュリティの意味がなくなるor薄くなる」と言える点です。
具体的に言えば、マンションの一部の所有者がAirbnb(民泊)を行うことによって、多数の外国人観光客がマンションの入居者しか入れない共用部分に入るようになるのです。
マンションのオートロックはもちろん、マンション内の警備員もセキュリティ的に意味がなくなります。
Airbnb(民泊)の利用者は「合法的」にマンションの所有しか入れない共用部分に入ることができ、場合によっては共用施設を使うことにもなりかねないのです。
もちろん、Airbnb(民泊)のホスト側がマンションの共用施設の使用をゲストへ禁止するように伝達することもあるでしょう。
ですが、相手は「外国に観光に来て楽しみに来ている外国人」です。多くの利用者は紳士的な利用をしていても、一部の不届き者が旅行のテンションの高さも相まって、夜にお酒を飲んで騒いだり、共用施設も不適切に利用することも十分に考えられるのです。
外国人の犯罪の実態を知る
当然ですが、すべての外国人やAirbnb(民泊)を利用する人が犯罪を犯すわけではありません。
ですが、マンション内に多数の区分所有者ではない外国人が頻繁に出入りするようになると、心配なのが犯罪です。
そこで、外国人による犯罪の状況をチェックしてみましょう。

外国人犯罪の検挙数(引用:来日外国人犯罪の検挙状況)
このデータは警察庁のデータですが、意外なことに外国人による犯罪数は実は減少している傾向にあるのです。
TVなどのメディアだけの印象では何となく外国人の犯罪が増えているような印象を抱いていた人も多いのではないかと思いますが、実際のデータでは上記のように減少しているのです。
また、出身国別の犯罪数は以下の通りです。

国籍別の検挙数(引用:来日外国人犯罪の検挙状況)
ある意味で当然ですが来日者数の多い、中国が犯罪数もトップとなっています。
意外というと失礼ですが、観光客数の多い韓国が犯罪数ではそこまで高くはないことも注目点と言えるでしょう。
そして、次に最も重要なデータが在留資格別の犯罪数です。

在留資格別の犯罪数(引用:来日外国人犯罪の検挙状況)
観光での外国人の場合は、上記の在留資格では「短期滞在」に入ります。
これだけ見れば、少なくとも「短期滞在」の在留資格を持つ外国人の「犯罪数」は減少していることがわかります。
もちろん、これらのデータで外国人の犯罪が少なくなっているから安心。とはいきません。
ですが、無闇に不安を煽られるのではなく、データをもとに適切に把握したいところです。
部屋を貸し出す側は旅館業法違反では?
話は少し変わりますが、Airbnb(民泊)に詳しい方の中には「そもそも部屋を貸し出すのは旅館業法違反では?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際に厚生労働省では、Airbnb(民泊)について「社会性をもって継続反復されているもの」であれば旅館業の許可が必要としています。
さらに、その問い合わせなどが多いためか、民泊専用のページも制作しています。
リンク:厚生労働省「民泊サービスと旅館業法に関するQ&A」
このページからでも上記指摘「そもそも部屋を貸し出すのは旅館業法違反では?」という問いには「社会性をもって継続反復されているもの」の場合、旅館業の許可が必要なため、旅館業の許可を得ていない場合「違法」と言えるでしょう。
実際に大阪や京都では逮捕者も出ていますので、許可がなければ当然、違法です。
出典:朝日新聞「民泊を無許可で営業、容疑の女ら3人を書類送検 大阪」*ニュースサイトは時間の経過でリンク先が切れる可能性があるためトップページへリンクします。各ニュースサイトでニュース名で検索すると出典に当たれます。(以下同様)
出典:産経WEST「無許可「民泊」で1億5千万円荒稼ぎか 京都府警、3人を書類送検」
ですが、逆に言えば許可さえ取ればもちろん、合法となります。(マンションの管理規約はここでは割愛します)
現時点(2016年5月)ではその許可を得ることが大変な労力が発生するため、許可を取る人が少なく、上記のような問題になっていますが、厚生労働省としては、民泊を一部解禁することに前向きなようです。
出典:毎日新聞「規制緩和を自治体に要請…厚労省」2016年4月12日 20時34分
一方でその厚生労働省の要請を受け、自治体側は緩和しないという反応をしているようです。
ですが、「大阪市」と「京都市」では検討中と回答しています。
出典:毎日新聞「35自治体、緩和せず…フロント設置義務付け」2016年5月22日 08時30分
これらのように、状況は流動的であり、複雑となっていますので、今の時点では判断ができません。
ですが、国としては外国人観光客を増やしていく方向性は明確であることから、民泊の規制緩和をしていきたいようです。
Airbnb(民泊)のメリットも?
この記事では色々とマンションの普通の住民から見た場合のAirbnb(民泊)のデメリットを解説をしてきました。
Airbnb(民泊)のメリットはそこまで大きなものではありませんが、多少のメリットもあります。
Airbnb(民泊)のメリット:転勤などで住めなくなった時の選択肢となる。
という点です。
もちろん、上記で挙げた旅館業の許可が必要であったり、マンションの管理組合の規定などの問題もあるため、簡単ではありませんが、今後日本全体としてAirbnb(民泊)が普及していけばマンション所有の選択肢も増えるという好意的な面もあります。
万が一、転勤などで住めなくなった場合、「売却」か「賃貸」か「放置」の選択肢だけでなく、「Airbnb(民泊)」という新しい選択肢が増えることによって、観光客にニーズの高い場所であれば、さらに市場価値も高まることも想定されるでしょう。
最後に
この記事ではAirbnb(民泊)の現状を中心に、いろいろな問題点を解説してきました。
Airbnb(民泊)の問題は現在進行形で進んでおり、この記事で記載した点が変わる点も出てくるでしょう。
当サイト「マンション探偵」としてもAirbnb(民泊)の問題は定期的に記事にしていきますが、読者の皆さんもこの記事に記載されているニュース元のサイトをチェックする、最新ニュースと比較するなどをして、最新情報をキャッチアップするように心がけましょう。