「福山雅治さん宅ストーカー侵入事件」で考えるマンションの安全性【コンシェルジュ】

「福山雅治さん宅ストーカー侵入事件」で考えるマンションの安全性【コンシェルジュ】

2016年5月22日に俳優、歌手の福山雅治さん・妻の吹石一恵さんが住む自宅マンションに、そのマンションのコンシェルジュの40代の女が合鍵を使い侵入したという事件が話題になりました。

大手メディアでも取り上げられており、有名人のニュースということもあって、このニュースを見た方も多いのではないでしょうか?

出典:朝日新聞「福山雅治さんのマンションに侵入容疑、管理会社の女逮捕

福山雅治さん・吹石一恵さん共に人気芸能ということで衝撃的なニュースではあるのですが、当サイトでは芸能ニュースとしてではなく「マンションの安全性」という観点でこのニュースを掘り下げていきます。

どんな事件だったの?

それでは、早速、福山雅治さんの自宅マンションの侵入事件について、概要を改めて確認をしておきましょう。

歌手で俳優の福山雅治さん(47)の自宅マンションの室内に侵入したとして、警視庁は22日、このマンションの管理会社のパート従業員宮本万里子容疑者(48)=渋谷区南平台町=を住居侵入容疑で逮捕し、発表した。宮本容疑者は、マンションで住民の要望などに対応するコンシェルジュ。「合鍵を使って入った。福山さんのギターが見たかった」などと容疑を認めているという。

捜査3課によると、宮本容疑者は6日午後8時25分ごろ、正当な理由がないのに、東京都渋谷区にある福山さんの自宅マンション室内に侵入した疑いがある。

福山さんの妻で女優の吹石一恵さん(33)が、帰宅時に室内にいた宮本容疑者と鉢合わせになったという。宮本容疑者は「すみません」と謝りながらそのまま逃げたが、マンションの防犯カメラ映像などから特定した。福山さん宅は普段から、合鍵を管理会社に預けていたという。

引用:朝日新聞「福山雅治さんのマンションに侵入容疑、管理会社の女逮捕

この事件には幾つかのポイントがあると言えます。

一つ目は「マンションの管理会社のパート従業員」による犯行であったこと。

二つ目は「福山さんがマンションの合鍵を管理会社に預けていた」という点がポイントと言えるでしょう。

管理会社のパート従業員だからこそ、管理会社へ預けていた合鍵に触る機会があり、それを用いて犯行に及んだと言えます。

また、マンションのコンシェルジュだったため、福山さんや吹石さんの外出状況などもある程度把握できることから、不在時を狙った犯行に及んだと言えます。

外部の人間であれば、複数のセキュリティがありセキュリティに厳重なマンションであっても、セキュリティを突破しやすい内部のコンシェルジュだからこそ起こりえた犯罪だと言えます。

そもそも「コンシェルジュ」とは?

既にご存知の方も多いとは思いますが、改めてマンションの「コンシェルジュ」とはどのような人たちなのか、改めて確認をしておきましょう。

コンシェルジュとは高級ホテルの受付にいる宿泊客のちょっとした要望に応えてくれる人を差していました。

コンシェルジュイメージ

コンシェルジュイメージ

マンションのコンシェルジュの多くは、そんな高級ホテルの受付にいるコンシェルジュのように、住民のちょっとした要望に応えてくれる人となっています。

具体的にどんなことをしてくれるのかは、マンションごとの管理規定などによっても異なりますが、一般的には以下のような事を対応できるようです。

  • タクシーの手配
  • 共用施設の利用申し込み
  • 宅急便の受付
  • クリーニングの受付
  • デリバリー・レンタル備品の受付

などがあります。

また、挙げられているこのメリット以外に外部からの不審者の侵入を防いだり、コンシェルジュがいるだけで満足感を感じることもあるでしょう。

管理会社へ鍵を預ける理由

ここで、ふと疑問に感じるのは管理会社へ鍵を預ける理由でしょう。

福山さんの事件は合鍵を管理会社に預けたことも一つのポイントと説明をしましたが、上記で挙げたタクシーの手配や共用施設の申し込み程度であれば、合鍵が必要になるシーンはありません。それでは、どうして福山さんは管理会社へ鍵を預けたのでしょうか?

これは、福山さんの管理会社へ問い合わせをしたわけではありませんので、想定ですが「マンションのセキュリティサービス」の為に預けていると考えることができます。

福山さんのような人気芸能人が暮らすマンションの場合、通常セキュリティが厳重なマンションを選んでいるでしょう。

そのようなセキュリティが充実しているマンションの場合、標準でセキュリティーサービスが付随しているため、例えばセキュリティーを破って強引に侵入者が入ってきた場合、センサーで感知してセキュリティ会社へ自動的に連絡され、警備会社の人間が必要に応じてマンション現地へ駆けつけるサービスに入っている場合があります。

例えば、実際のセキュリティサービスの一例を見てみましょう。

以下はマンションの供給戸数で1位となっている住友不動産のマンションで提供されている24時間セキュリティサービスになっています。

住友不動産【24時間オンラインセキュリティシステムS-GUARD(エスガード)】引用:住友不動産HP

住友不動産【24時間オンラインセキュリティシステムS-GUARD(エスガード)】引用:住友不動産HP

各住戸には「ガス漏れ」や「火災」「非常「防犯センサー」などがつけられています。

そこで異常が知らされればマンションの管理事務室などからの経由で提携している警備会社(ここではセントラル警備保障社)へ連絡が入ります。

その後、警備会社の社員が現地に駆けつける。必要に応じて110番や119番へ連絡をするというサービスとなっています。

そこで、例えば、留守中に「ガス漏れ」や「火災」があった場合や「急病」などで室内で倒れてしまった場合などでもスムーズに警備会社の社員が対応できるように合鍵が必要になってくるのです。

また、「ガス漏れ」や「火災」「急病」などは一刻を争う事態であり、また「ガス漏れ」や「火災」は他の区分所有者へも影響があるため、合鍵を預けることは全体の利益のためにも必要と言えるでしょう。

※ここでは住友不動産のセキュリティサービスを一例として挙げていますが、他社のセキュリティサービスでも大きくは変わりません。

警備会社の社員の基準

とは言っても、「警備会社に合鍵を預けるというのは不安だ」と思われる方も少なくないかもしれません。

今回の事件の「コンシェルジュ」とは立場が異なりますが警備員には誰でもなれるものではありません。

警備業法第14条に警備員になれない基準が以下のように決められています。

  1. 18歳未満の者
  2. 成年被後見人もしくは被保佐人または破産者で復権を得ない者(以上、責任無能力者)
  3. 禁錮以上の刑に処せられ、またはこの法律(警備業法そのもの)の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者(前科がある者)
  4. 最近5年間に、この法律の規定、この法律に基づく命令の規定もしくは処分に違反し、または警備業務に関し他の法令の規定に違反する重大な不正行為で国家公安委員会で定めるもの(警備業の要件に関する規則第1条に規定されている。懲役5年以上、最高死刑若しくは無期懲役となる重大犯罪)をした者
  5. 集団的に、または常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるもの(警備業の要件に関する規則第2条に規定。全58号)を行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
  6. 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第12条もしくは第12条の6の規定による命令(暴力的要求行為やみかじめ料要求の禁止)または同法第12条の4第2項の規定による指示(指定暴力団構成員へ発される暴力的要求行為禁止指示)を受けた者であって、当該命令または指示を受けた日から起算して3年を経過しない者
  7. アルコール、麻薬、大麻、あへんまたは覚醒剤の中毒者
  8. 心身の障害により(精神障害者・身体障害者のうち)警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定める者

引用:警備業法

上記の警備員になれない基準が「禁錮以上の刑になってから5年以内の者・暴力団員・薬物中毒者」などであり、基準としてあまり高い基準ではないため、このような基準があるから安心。とは思えないかもしれませんが、このような基準が無いよりはマシと言えるでしょう。

改めて、この事件を振り返ってみる

いろいろと解説をしましたが、改めてこの事件を振り返ってみましょう。

まず、犯行に及んだのは5月6日、そして逮捕されたのは5月22日となっており、かなり短い期間でありスピード逮捕と言えるでしょう。

また、逮捕につながったのは「防犯カメラ映像などから特定」とあります。

カメラの映像や鍵の開錠方法などから、外部の人間の犯行か、内部の人間の犯行なのかはわかります。

内部の人間の犯行ということがわかれば、犯人探しも非常に容易になることから、今回のスピード逮捕となったのでしょう。

ということは、これから別の場所でコンシェルジュが同じような犯行を及んだとしても、すぐに捕まる。容疑者の第一候補になると言い換えることができます。

また、今回の福山さんのマンションの事件では容疑者は「福山さんのギターが見たかった」と述べており、盗む目的ではないと供述しています。

どこまで、容疑者の供述が本音なのかはわかりませんが、もし盗む目的であったとしたら、吹石一恵さんと鉢合わせにならなくても、ギターなどが無くなっていることがわかれば、すぐに犯人はわかるでしょう。

これらのことから、一般人がセキュリティーが厳重なマンションで福山雅治さんと同じようなコンシェルジュが部屋に入るという事件に巻き込まれる可能性は低いのではないかと考えられます。

  • 住人と鉢合わせにならなくても、物を盗めば犯行が明らかになること。
  • そもそも、物を盗む以外で一般人の家に侵入する可能性は低いこと。
  • セキュリティーが厳重であればあるほど、事件が起きれば内部犯の可能性が疑われること。
  • カメラなどの映像から犯人を割り出される可能性があること。

などから、コンシェルジュが自分の働いているマンションで犯罪を行うリスクが非常に高すぎると言えるため、普通の一般人の家に窃盗に入るためにコンシェルジュが犯行を行うことは考え難いので、安心をしても良いのではないでしょうか。

最後に

今回の事件では、コンシェルジュによる犯行ということもあり、高級マンションのセキュリティーに疑問が残るという感想を持たれた方も多いのではないでしょうか?

ですが、逆に考えてみるとここまでスピード逮捕に繋がったのもセキュリティーが厳重で防犯カメラに犯行が映っていたことや、誰でも簡単に侵入できるわけではないことから、内部の人間の犯行を疑えた為とも言えます。

そういった意味では、管理体制に不手際があったものの、セキュリティが厳重であることが有効に働いた結果とも言えます。

もちろん、このような犯罪は許されない行為であり、福山さんや吹石さんに万が一のことが起きていたかもしれない事件です。

管理会社・コンシェルジュには合鍵の取り扱いを厳重にして、無断で使用できないようにするなどの対策が進んでいくことが望まれます。