「空き家が増えるからマンションを買うな」は嘘? 隠された本当の空き家問題の秘密とは?

「空き家が増えるからマンションを買うな」は嘘? 隠された本当の空き家問題の秘密とは?

よく書店には「今はマンションを買うな!」「空き家が増えて日本の不動産は暴落する!」という刺激的で煽るようなタイトルが付けられている本があり、気になる人も多いのではないでしょうか。

結局、このような本を読んでみると終盤には、ほぼ中古マンションを勧める内容が多く、しかも中古マンションの最大のデメリットである「建て替え問題」には触れていないものが多い印象です。そのような書籍には「築20年の中古マンションを買えば賃貸と同じ金額のローンを10年~15年程度で支払えば、後はローンがなくなって後は自分の物」と書いています。

この点について、詳しい解説は本サイトの「マンションの寿命を分析 〜マンションはあと何年住めるのか?〜」で行っていますが簡単に解説をするとと「築20年の中古マンション」はすぐにローンを完済することはできるでしょうが、「35年でマンションは建て替えられている」というデータがあります。つまりその建て替え費用を無視している書籍が多い点が問題です。

よく建て替えと修繕を混同される人がいますが、「修繕積立金」はマンションの修繕の為の積み立ててであり、通常建て替えでは考慮されていないのです。そのため、建て替えを行う場合、建て替えの一時金で1000万円ほどかかってしまうのです。

つまり、20年の古いマンションを買えば10年や15年で住宅ローンを完済できるかもしれませんが、その後すぐに「建て替え一時金 1000万円」が発生しますが、それに触れていない本があるのです。

(注:全ての本が触れていないわけではなく、しっかりと触れている良心的な本もありますが、一部「貧乏人は資産を買わずに負債を買う」や「家は余るので今後はタダで家を手に入れられる」などと言って、ミスリードしている書籍もあります。)

もともと「日本における空き家問題」は不動産マーケットの暴落を危惧するものではなく、住み手が居なくなり、賃貸にも出せなくなった古い家が放置されている為、倒壊などの危険性があるというのが元々の問題でした。

古い家が残っていれば固定資産税が減額されるのが、更地にしてしまうと固定資産税が増えてしまう。さらにそもそも家の解体費が出せないため、空き家となり周辺の環境を悪化させてしまうというのが問題です。

それを、「空き家が増えるから家が余るので不動産価格暴落する」とミスリードしている書籍が多くあり、しっかりと検討している人が無駄に不安に感じてしまうのは良くないため、この記事をお送りします。

 

秘密その1:築年数ごとの空き家率を知ろう。

マンションの建築年度別の賃貸及び空室戸数割合というデータがあります。

詳しくはこちらの書籍に記載されていますが、「不動産マーケットの明日を読む」(リンク先:日経BP社)によると、マンションが建てられた年代別に空き家率や賃貸の率を示しています。

これによると1969年以前、つまり44年以上前の建物は空き家率は「8.2%」ですが、~1974年は「5.6%」、~1979年は「4.7%」とマンションが新しくなる毎に数値が低くなっています。

つまり、当たり前の話ですがマンションが古くなればその分、空き家率が上がっていく。ということを示しているだけとも言えます。

そして、空き家率が上がるということは、40〜50年ほど前の高度成長期に団地などが建てられたのが空き家になり、数が増えるという話なのです。

出展:不動産マーケットの明日を読む」日経BP社・国土交通省「平成25年度マンション総合調査」

(ちなみに、この書籍は自称専門家が書いたような刺激的な書籍ではないため、アカデミックで読みにくいのですがその分、根拠もしっかりとした書籍となっており、オススメです。)

秘密その2:その「空家」は「戸建住宅」なの?「マンション」なの?

秘密その1で挙げた上記の数値を見て、もしかしたら違和感を感じた人もおられるかもしれません。

44年以上前のマンションなのに空き家率はたった「8.2%」?

しかし、書籍で見ると空き家率が10%を超えて将来的には40%と言われていると記載が…

これは、単純に言うとその「空家」が「戸建住宅」なのか「マンション」なのか定義されずにメチャクチャな場合が多いのです。

そのため、田舎の鉄道も到底ないような過疎地域の空き家を含んでいる数値を東京や大阪のど真中のマンションと同じ土俵に上げて煽っているのです。

(もちろん、高度成長期に建てられた団地などが空き家になってくるため、今後はマンションも空き家率は増えて行くと言えます。しかし、だからと言って空き家の多い戸建ての数値をもとに「新築マンションを購入してはいけない」というロジックは成り立ちません。)

秘密その3:その「空き家」は人が住める空き家なの?

平成25年時点で空き家は「8,196,400」戸あります。(総務省 「平成25年住宅・土地統計調査」より)

煽りたい人はすぐにこの数字をもとに「この数がどれだけ多いか」と考えますが、もっと中身を見ていきましょう。

空き家の種類(画像引用:統計局ホームページ)

空き家の種類 クリックで拡大(画像引用:統計局ホームページ

この数字の中で「実際に住むことができない戸数はどのくらいあるのか?」を把握しなければなりません。

総務省では空家を「売却用の住宅」「賃貸用の住宅」「二次的住宅」「その他の住宅」と4つに分類しています。

「売却用の住宅」「賃貸用の住宅」は名称の通りそのままの意味です。そして、「二次的住宅」とは別荘などを指します。

そして、問題は「その他の住宅」。

これは、入居者が高齢で死亡したものの相続人が他の地域に住宅を所有しており、入居希望者もおらず空き家になっているなどが入ります。(「その他」ですので、当然それ以外も入ります)

そして、この数値が「3,183,900」戸もあるのです。

つまり、現時点ので全ての空き家のうち、「38.8%」の数値が、「実はほぼ人が住めない(住もうと思えない)住宅」なのです。(売れたり、賃貸に回せるのであれば「売却用の住宅」「賃貸用の住宅」になるはずです)

そして、当然ながら高齢者が増えている状況から、この割合は今後も増えていくのです。

つまり、空家が増えると脅している人の言っている「空家」のうち約4割は誰も住みたいと思わない空家なのです。そんな誰も住みたいと思わない空家が増えたとして、都心部のマンションの価値が崩壊するのでしょうか?

 

秘密その4:20年前のバブルの時の「空き家率」ってどのくらい?

そもそも、空き家率という単に数値が悪者で減らせば良いというものなのでしょうか。

仮に空き家率が限りなくゼロになると、住居の選択ができない状況になるわけです。具体的にはどんな僻地の古い住宅に対しても、住みたい人がいるという状況になります。

そのような状況は果たして健全なのでしょうか?

空き家率が多すぎのは確かに問題ですが、ある程度ストックがあるということも重要なのです。

ここで、参考として20年前のバブルの時。つまり、不動産価格が急激に上がっていた時期の空き家率を挙げてみます。

昭和63年のバブルでも空き家率は上がっている

昭和63年のバブルでも空き家率は上がっている。(画像引用:統計局ホームページ

昭和63年:バブル景気真っ只中の時期の空き家率は9.4%です。

不動産バブルと言われていた時期ですら、空き家は増えているのです。(微増ですが…)

果たして、本当に空家率というデータが将来の不動産価格に役立つデータと言えるのでしょうか?当サイトでは疑問を感じざるをえません。

私たちは「僻地など例外があるが、空家がどれだけ増えても、家の価値がゼロになることは有り得ない」と考えます。

 

最後に

当サイトは、マンションの購入を煽っているわけではありません。

もちろん、日本は人口減少していく為、住宅の価値が上がっていくということは考えられません。

だからこそ、慎重に判断をすべきだと考えます。

「貧乏人は資産を買わずに負債を買う」や「家は余るので今後はタダで家を手に入れられる」などと煽るのは間違いだと考えています。

 

もちろん、中には稀な条件で実際にタダで手に入る家もあるでしょう。例えば古くて管理費の高く、修繕積立金が積み立てられていないような観光地などにあるマンションや田舎で「集落」として限界を迎えているような場所の古い家ならタダ同然で手に入るでしょう。

その話を都心部の住宅事情と同じにするのはミスリードです。

ミスリードに騙されず、自分自身のライフプランをしっかりと考えた上で、マンションを購入するかしないのかを判断してください。