【定説に反論】人口減少の今だからこそ、持ち家が有利?

【定説に反論】人口減少の今だからこそ賃貸より持家が有利?

絶対に決着がつかない賃貸VS持家論争。

この論争が結局、決着がつかないのは、持家を保有することや賃貸で家賃を支払い続けることのどちらも投資と考えるならば、有利になるケースと損するケースのどちらも発生してしまうため、一概にどちらが有利なのか結論を出すということは、難しく決着がつかないと言えます。

今回はその結論を出すという話ではなく、「賃貸有利」とする根拠の一つに「人口が減少するから賃貸が有利」という考え方がありますが、ここではその考えには落とし穴があることを解説していきます。

とある書籍では「タダで家を手に入れられる」「家は負債だから買わないほうが良い」と煽る書籍まで登場しており、冷静に判断をしていただくためにこの記事をご覧いただき、「私の場合は賃貸と持家だとどちらが良いのだろう」と考えるきっかけにしてみてください。

 

 

落とし穴1:日本全体が人口減少する=都心部の人口が減少するには繋がらない。

いきなり本質の話になりますが「日本全体の人口が減少していく」というトレンドは今後、移民などを受け入れない限り数十年のスパンでは続いていきます。

理由は人口が減少していくことは皆さんご存知の通り、シンプルに合計特殊出生率が2を大きく下回って1.42程度(2014年数値)になっているためです。

人口を維持するためには、単純計算でも2を維持しないと人口は減少します。(正確には若くして亡くなってしまう方がおられるため2.08と言われています)

ただ、それだけではなく、直近40年以上合計特殊出生率が2を下回っていたため、そもそも高齢により出産できなくなる人たちよりも出産できる年齢になる人が圧倒的に少ないため、構造的に人口が減少する確固たる構造が確立されてしまったのです。

団塊の世代など人口が極端に多い世代が高齢者となり、今後亡くなる方がどんどん増えていくことに対して、出産適齢期の人口が少なくなってきているため、仮に出生率が大きく改善したとしても人口が減少するトレンドは続きそうです。

 

この根拠から「日本には人口がどんどんと減っていく」=「住む家が余ってくる(空き家が増える)」=「空き家が増えて部屋を貸したいが入居してくれる人がいない」=「家が余るため家を持っているよりも賃貸の方が良い」という論を言っている人が多いのですが、ここに大きな落とし穴があります。

「日本全体の人口が減っても、都心の人口は増える」

この構造を完全に無視してしまっているケースが非常に多いのです。

「日本全体の人口が減っているのに、都市部が増えるはずがないじゃないか」と思われるかもしれませんので、まずはそのデータをご覧ください。

まず最初にご覧いただくデータは日本の人口の増減数のデータ。つまり何人増えたのか。何人減ったのか。というデータです。

 

日本の人口の増減数(引用:総務省統計局)

日本の人口の増減数(引用:総務省統計局

このデータから、日本は2005年から2007年ごろの時期にかけて人口が増えもしない、減りもしない時期であった。

その後、2008年に7万9000人の減少を皮切り現在まで、いずれの月においても、人口は前年に比べて減少しており、しかも、減少率は徐々に大きくなってきています。つまり、2008年が人口が継続して減少する社会の始まりの年~人口減少社会「元年」と言えそうです。

では、次に都心部の人口の推移をご覧ください。

東京都の人口の推移

東京都の人口の推移(引用:東京都HP

先ほどの人口減少が2008年、つまり平成に合わせると平成20年から日本の人口は減少しています。

しかし、東京都の人口に関しては、平成20年以降も堅調な伸びを示しているデータがあります。

 

ここで、改めて冒頭の論拠を思い出してください。

「日本の人口がどんどん減っていって、空き家が増えていきやがて家の価値はゼロになるどころか負債になるため家は買わないほうが良い」

もちろん、日本の地方など人口の減少が著しい場所は当然、その論理が当てはまる場所も多くあると思います。都心部以外はほぼ全て当てはまるでしょうから、ある意味間違えたことは言っていないとも言えるのでしょう。

しかし、都心部などは逆にコンパクトシティーとして一箇所に集まった方が効率的に都市形成がなされるため、逆に人口が増えて行くとも言われています。センセーショナルな言葉に騙されるのではなく、本質をしっかりと把握するようにしてみてください。

 

余談:ちなみに何故日本の人口が減っているのに、都心部の人口が増えるのか。については説明が長くなるのでシンプルに言うと人口が減ることによって益々地方に住むことが困難になっていくため、、都心に集まっていくと言われています。実際に地方に住んでいた高齢者夫婦などは子供の独立を機会に田舎から都心部のマンションを購入して移り住むというケースも非常に多いのです。

地方の大きな家は子供がいれば便利ですが、年寄り二人が住むには広すぎて手入れするのに逆に面倒ですので、マンションが丁度良いと言われることも多いようです。

そういったニーズも今後は底堅くなるため、都心部の中古マンション市場は人口減少の影響は少ないと言えるでしょう。

そのため、しっかりとニーズの高い場所を選ぶことによって「家の資産価値を保つ」ことは十分に可能です。

 

 

落とし穴2:結局、人はどこかには住まないといけない。

持家は維持するだけでも、「固定資産税」と「家のメンテナンス費用」「管理費」がかかる。

だから「持家は資産ではなく負債だ」という意見があります。

この意見は間違えておらず、事実マンションや戸建てのどちらでも税金は発生しますし、家のメンテナンス費用・維持費用は発生してしまいます。

では、賃貸になれば「固定資産税」と「家のメンテナンス費用」「管理費」は支払わなくてもいいのでしょうか?

「家のメンテナンス費用」「管理費」は当然、家賃や共益費の中に組み込まれていますし、「固定資産税」も資産の持ち主に対して発生する税金ではありますが、賃貸の場合でも結局、家賃の中に組み込まれていますので、結局のところ賃貸であっても「固定資産税」や「家のメンテナンス費用」「管理費」を間接的に支払っていることには変わりありません。

 

つまり、「持家は資産ではなく負債だ」という意見を言っている人は、賃貸にも同じように発生している項目を無視して比較をしていると言えるでしょう。

この論理を拡大解釈すると「人間は生きてるだけでお金がかかるので負債だ」と言っているのと差はありません。

まあ、間違えたことは言っていないと思いますが、なかなか腑に落ちない考え方と言えるのではないでしょうか。

 

 

落とし穴3:高齢者になると家を借りにくい。

落とし穴の2の続きのような話ですが、人はどこかには住まないといけないのですが、高齢者になるとなかなか家を借りにくいという実情があります。

実際に借りたい人が多いような立地の場合には、孤独死などをされてしまっては良くないため、あまり積極的に高齢者に貸したいオーナーは少なくなります。

もちろん、借り手が少ない地方などにおいては高齢者でも借りやすいのですが、日本全体の人口が減っていくトレンドであるため、そういった都市が高齢者にとって住みにくい都市になっていきます。

一方でコンパクトシティに代表されるような高齢者にとっても住みやすい地域は当然人気の地域になるため、「これから空き家が増えるから高齢者になっても物件を借りる心配は不要」と言い切るのは些か不安が残る、大きな落とし穴となってしまう可能性があると言えます。

 

 

最後に

この記事の目的は「持家万歳!家を買わなきゃ損だよ」と言いたいわけではなく、「今後、空き家が40%になり空き家だらけになるので、家は買うな!」と煽るような書籍に騙されずちゃんとしたデータを見て、その上で自分に持家はあっているのか、賃貸の方がいいのかを判断してほしいという目的で記載しました。

結局のところは「絶対に家を買うな!」もしくは「絶対に家を買え!」という煽る記事や書籍には一歩引いて冷静に自分にとって賃貸と持家のどちらがあっているのか。そして、購入を検討するマンションの価値はどのくらいあるのか。これをしっかりと見極めることが大事だと言えるでしょう。

本サイトの特集記事にはマンションの価値の見極めに関する情報が他にもたくさんあるので、ぜひそちらも見ながら見極めていくと良いでしょう。