「低金利は今しかない」と焦らされた人へ。低金利の背景と歴史を紐解く
まず、この記事は金利についてのややこしい話が中心になるため、マンションの購入において知っておきたい結論から先にお話しします。
「結局のところは低金利がいつまで続くのかはわからないが、今までの低金利の時代が長いため、急激には上がらない。だから今すぐに金利の低さに焦って契約をする必要はない。」(2016年3月時点)
これがこの記事で押さえていただきたいポイントと言えます。なぜ、そんなことが言い切れるの?と気になった方は是非以下の本文をご覧ください。
よくマンションの購入の営業マンから「これほど低金利な時代はありません。このチャンスを逃してはいけません。」「いつ金利が上がるかわかりませんよ」と言われている人も多いかと思いますが、日本が低金利政策を始めたのは10年以上前からであり、日銀による経済短観くらいを読めばおおよその今後の流れはある程度は掴めます。
もちろん、その通りに実際行くかどうかはケースバイケースですが、経済の時流を抑えるという点で根拠ある情報と言えるでしょう。
では、早速、今の日本の低金利政策についての市場や日銀などがどのように考えているのか、そして低金利の歴史を振り返ってこれからの日本の金利の姿を考えてみましょう。
日本銀行は金利を上げるのではなく、下げる方に意識がある。
日本銀行(以下日銀)によるマイナス金利の発表は記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
マイナス金利については当サイトでも取り上げており、別記事「住宅ローンはマイナス金利でどう変わる? 〜図解でわかりやすく解説します〜」をご覧いただくと良いですが、その日銀のマイナス金利発表のリリースの文面に重大なヒントが隠されているのです。
「金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。 今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。」(引用:日銀「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入より 太字、下線は本紙編集)
この文言だけで日銀が金利についてどのように考えているのかを明確に表していると言えます。
少なくとも近々の話では「金利を下げるかもしれないぞ!」と考えていますが「金利を上げるかもしれない」とはそこまで考えていないことが言えます。
日銀から見た場合、民間の銀行が中小企業を始めるとする民間企業へ融資を積極的に行い、機械や人材に投資を行うことで経済を回復させるというのが王道であると考えているようです。
そのため銀行に対してどんどんと融資を促していくために、いろいろと施策に取り組んでいるのです。
現在はその道半ばという状況でもあるため、今後も金利については低い水準を維持していくものと想定されます
日銀のマネタリーベースは過去最大。
シンプルに考えると上の根拠だけでも、今後金利が近々に上がらない根拠として十分ではありますが、さらにもう一つ金利がすぐには上がらない根拠があります。
それは、日銀のマネタリーベースが過去最大になった事実です。
以下のグラフは少し古いのですが、この数値はさらに大きくなっており、2016年2月時点では358兆円にまで増えています(日銀発表)
さて、このマネタリーベースとは何か?増えたらどうなるのか?についてですが、マネタリーベースとは簡単に言うと日本全国に出回っているお金の合計と考えるとイメージしやすいでしょう。(正確には現金通貨と日銀への預け金の合計の合計額を指しますがここでは簡略化します)
そして、これが増えるとどういう状態になるのか?
マネタリーベースが増えるということは市場の中のお金も増えて行くことになりますので、貸したいお金が増える状態となります。
そうなるとお金が余っていく状態となってきますので、金利に対しては下がっていく効果が生まれます。
もっとも、実際の金利に対してはマネタリーベースだけでなく、国債長期金利などが影響しますが、マネタリーベースの増加が金利に対する下方圧力になってきます。
つまり、今から「日本全体として金利を上げていこう」という発想になったと仮定してもマネタリーベースの金額が大きくなっているため、その分を超える資金のニーズが増えないことには金利が上がっていかないと考えることができます。
低金利の圧力は強い
これら2点によって、日本の長期金利における低金利の圧力は依然として強く、しばらくは低金利が続くものと考えられます。
時期について、明言することは難しいですが、1〜2年程度は確実に続くでしょう。
5年程度先においても今よりも金利が高いか低いかは予見できませんが、金利が相対的には低い状態である。とはいえると考えられます。
現時点の日銀の方向感やマネタリーベースの増加傾向から金利が上がっていくプランは今の日本経済には見えないと言えます。
また、為替と異なり金利の場合には、より操作しやすい面がありますので、その点も踏まえて低金利は維持していくと当サイトでは考えます。
日本の低金利の歴史は長い。
次に日本の低金利の推移を見てみましょう。
本記事で掲載している金利の定義がまちまちなのですが、本記事で大事なことは細かい数値ではなく大まかな流れ大局観をつかむことになりますので、ここでは分かりやすい指標を選んでいきます。
ここでは財務相の発表する公債残高と公債における金利の推移を見てみましょう。
どの金利から低金利と一概に言うのかは定義がありませんが、上記金利においても2%を平成14年につけてから下がり続けていますので、約14年以上にわたって金利が低い状態が続いていると言えます。
これだけの期間に渡って金利が低い状態が続いていたのです。
また、小泉政権下において行われていた量的金融緩和政策と相まって金利は常に低い水準を維持する結果となっていました。
低金利は住宅の購入のチャンスではあるが焦る必要はない。
これらのことから、当サイトでは確かに低金利は住宅の購入においてチャンスであると言えますが、上記の背景などから今後すぐに急激な金利上昇は考えづらいい事もあるため、焦らずに慎重に検討をすることをお勧めします。