「マンションは売れなくなっている」って本当?【発売在庫戸数をデータで見る】

「マンションは売れなくなっている」って本当?【発売在庫戸数をデータで見る】

最近、「マンションが売れなくなっている」というニュースをご覧になられた人はいるだろうか?

経済の専門誌や一般の新聞ではなく、刺激的なタイトルで読者を煽る週刊誌では、最近「マンションが売れなくなっている」という特集が増えてきています。

「超低金利でも売れない… 不動産販売バブル崩壊の裏事情」(週刊実話)

「住宅ローン超低金利でも新築マンションが売れない理由」(NEWSポストセブン)

といった具合です。

この記事では、「事情通」のコメントではなく、正確なデータをもとに発売戸数と在庫の戸数を年単位での過去の推移を見ながら今のマンション市場にどのようなことが起きているのかを一緒に考えてみましょう。

発売戸数・在庫戸数の推移

まず、ご覧をいただきたいのは、近畿圏のマンションの発売戸数の推移です。

この推移で注意をいただきたいのは「発売」の推移であるということです。「売れた」推移ではないことに注意したい。

近畿圏マンション新規販売戸数

近畿圏マンション新規販売戸数(引用:国土交通省「住宅関連データ」)

この数字を見ると年々減ってきていることがわかります。

当然、マンションの「発売」の件数が減っているから、マンションの「販売」の件数も減るのはある意味で当然といえば当然かもしれません。

ただ、この「発売」の元データに当たらずに単に「マンションは売れなくなっている」と騒ぐのは早計と言えるでしょう。

ただ、それだけでは終わりません。次のデータもご覧ください。

近畿圏マンション在庫戸数(引用:国土交通省「住宅関連データ」)

近畿圏マンション在庫戸数(引用:国土交通省「住宅関連データ」)

このデータは近畿圏のマンションの在庫の数値を示しています。

ここでいう在庫とは完成在庫を指します。多くのマンション業者では、マンションを完成する前に売り切るようにしていますが、完成してからも売れていない戸数を在庫としています。

上記のグラフからも明らかなように、マンション在庫も大きく減少してきています。

単に在庫が減っているだけであれば、発売したマンションの件数も減っているため当たり前と言えるでしょう。

在庫比率も下がってきています。

例えば発売したマンションが在庫になる比率は平成26年だと11.13%。一方で比率の高い平成10年だと24.5%となっています。

このデータから今の時点は昔のマンション売れにくい時期と比較すれば「マンションを作れば、売れる」と言っても過言ではない時期と言えるでしょう。

では、なぜもっとマンションを作らないのか?

そもそも、マンションは「今、売れるから作ろう!」と言ってすぐにできるものではありません。

一般的なマンション開発の流れは以下の通りとなっています。

マンションの開発の流れ(引用:国土交通省「近年におけるマンション市況の推移とマンション着工の動向について」)

マンションの開発の流れ(引用:国土交通省「近年におけるマンション市況の推移とマンション着工の動向について」)

マンションの着工まででそもそも1年程度かかってしまうのです。

ですから、どれだけ市場が「今はマンションが売れる時期だ」となっても、すぐにはマンションは作れないのです。

そして、さらに現在はマンションに適した土地が少なくなってきており、マンションディベロッパーはマンションを開発したくても、良い土地が少なくなってきているのです。

実際に以下のデータでは、現在新築で開発されたマンションは現在新たに販売されたマンションは最寄り駅から平均で6.0分となっています。

リンク先:【駅から10分だと遠い?】最新の新築マンションのデータを分析レポート2016年4月度

平均所要時間 最寄駅から6.0分

「関西の人気のある駅から徒歩6分ほどでマンションに適したまとまったある程度の土地」となると、良好な土地の争奪戦となっている様子です。

もちろん、在庫になるマンションがゼロではないため、どこでも良いというわけではありません。

そのように考えると「マンションが売れなくなってきている」と言うよりは、「売れるマンションを建築できる場所が年々なくなってきている」というのが実態と言えるでしょう。